我が祖国イスラエル
雨。
屋根を打つ雨音が響く。時たま金属音の様な音さえ聞こえる。雹が混じっているのだ。この国には淑やかな雨というものはいらっしゃらない様だ。もう少し優しい雨だったら考えたものの、徒歩20分の事務所に傘もささずに出かけるわけにもいかない。ちなみに傘は事務所に忘れて来た。
(しかたがない。家に一旦戻るか。)
そう思いユダは家に戻る。すると、途端に雨の音が止んだ。窓から外を見ると灰色に染まった地中海が見える。雨はやんだようだ。しかし、また外に出て実はまだ降っていたとなると、寒い思いをするだけになる。それは絶対にいけない。窓を開ける。そう、窓を開けるのだ。
案の定まだ雨は降っていた。
(降っとるんかい。)
ユダは最近休暇で1ヶ月日本という国の大阪という街に滞在していたのだが、そこの方言を無性に使いたくなる衝動に時々かられるのであった。
(なんと自分の思っていることを言い表しやすい方言なのだろう。)
窓を開けて雨がまだ降っているということが確認できたのはいいが、何かしゃくに触る。負けた気がするのだ。そうだ、どうせならもう少しこの雨に打たれるわが町ハイファを目に収めてやろうではないか。
外には誰もいない。そりゃそうだ。イスラエルなのだから。雨季にしか雨が降らないこの国で、雨とはもちろん恩恵なのだが、滅多に会わない恋人のようなもので、来てしまってはどのように対処したら良いのか検討もつかないのである。日本国からしてみたら滑稽かもしれないが、ひとたび国が変わってしまえば、あたりまえなど変わってしまうものだ。
ん、しかし、ちょっと待てよ。
ユダはこの間ハイファにあるとあるアジア料理店のメニューのことを思い出していた。どちらかというと少しお高いレストランに上司に連れられて行って来たのだが、そこで出たメニューがこれだったのだ。
左下に注目して欲しいのだが。。。
「なんで短大やねん!」
「せめて大学にして!いや、大学でもおかしいわ!」
とやはり関西弁が飛び出してしまうのであった。
なぜに、短大なのであろう。自動翻訳機を使うとしても、なぜその単語をそもそも選んだのであろう。
もしかすると、この国は少しおかしいのではないだろうか。いや、そんなはずはないこれは我が祖国なのだ。
はっ。
ユダの脳裏をよぎったイメージは去年卒業校のテクニオン・イスラエル工科大学のキャンパスに訪れた時のものだった。
なにやら工事をしていたらしいのだが。。。
「ちょっっっっっと、まっっっったあああああ!」
「え、なんか。まって、え、もっと他にあったくない!?
この像作った人も絶対こんな使われ方されると思ってへんかったはずやで。
人権損害、いや、像権損害や!
直訴じゃ、直訴!
井伊直弼もびっくり。
ん?
いや、そんなことよりこの像でしょ。
像がかわいそうやん!
え、なんで大阪弁そんな流暢って?
そんなもん気にしてたらここでは生きていかれへん!」
なぜ今私は100mを全力疾走した気分なのだ。なぜ、私の鼓動は青春を思い出しているのか。それもこれも、全てこの像のせいなのだ。いや、もっと言えばこの国のせいなのかもしれない。
しかし、この国は我が祖国なのだ。愛国心を決して忘れてはならない。
ふむ、いやまてよ。私が主観的すぎるのかもしれない。なにか、客観的な観点を得られないものだろうか。。。
はっ。
私は大学時代の日本人の友人であるMとの会話を思い出していた。
M「この前さ、バス乗ってたら。
ギガッ
って音がするやん。」
しかも最後ちょっと風に立つライオンみたいなってるやん!
まてまてまて、このブログ一応僕のブログや!
まだ言わせてもらいたいことがたっっっくさんあんねん。」